私の好きな人 私を好きな人
『いち、に、さん、し、』


ピカピカの体育館の床はひんやりして気持ちがいい。


私は足を開いて座り、背中を麻衣にゆっくり押してもらってストレッチをしていた。


麻衣の力加減は本当に絶妙で、私は固い体をゆっくりストレッチしていた。


私たちの他にも、サークルの部員たちが、練習が始まるまでの時間、ストレッチをしたり、おしゃべりしたりして過ごしている。



『あ、いててて…』

『ごめん、強かった?』

『ううん、だいじょおえっ!?』



急に、ぐっと何か重いものが背中に乗り、変な声を出してしまった。


振り返ると…


『蒼太先輩!』

Tシャツにハーフパンツの蒼太先輩が、私の背中に手をついてニヤニヤしている。


『お、重い…んですけど…』


『おー、わりわり。さやえんどう、そこにいたのか。ちっちゃいから見えなかったわ』


蒼太先輩は、ぎゃはは、と笑うと、他の先輩とバスケットゴールのリング目がけてトスの練習を始めた。


あれ以来、蒼太先輩は何かと私をいじめにくる。


はぁ…
痛い…。


私が太ももをさすりながら顔をしかめていると、
美樹先輩が、
『大丈夫?』
と笑いながら聞いてくる。


『大丈夫じゃないですぅ』
私は美樹先輩に泣き真似をする。


美樹先輩は私の頭をなでながら、にっこりして言う。

『蒼太って、ほんとに、紗耶香ちゃんいじめるよねぇ』

『そうですよ、あの人、鬼ですよ』

学食での一件は、隼人先輩によってサークル内にすでに知れ渡っている。




『蒼太はあっち系じゃなかった』



蒼太先輩がいないとき、隼人先輩たちは、

『正直、俺狙われてる?ってびびってたから良かったぜ』

『いや、狙われてたのは俺だ』

『俺だ』

と、盛り上がっていた。
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