私の好きな人 私を好きな人
しーーーん、
としたスタッフルームに、

チッチッチッチッ…

時計の音が響く。


私はハナに発注をさせていた。

今までは、私がするのを横で見させていたけど、今日は初めて、ハナにやらせてみようと決めていた。


ハナは、発注表とここ一週間の売上表を交互ににらんでいる。


そのきれいな横顔を私は見ながら、
なんかハナ、大人っぽいな、と思う。
蒼太先輩よりも、ずっと大人っぽい。
蒼太先輩がこんな顔をするのは、バレーボールの試合の時くらいだ。
きっと講義の時もふざけてるに違いない…。



蒼太先輩のことをぼんやりと考えていた私は、
ハナの、
『出来ました』
の声にハッとする。


『ん。発注表、見せて』

私が言うと、ハナは一瞬渡すのをためらって、

『エスプレッソ豆なんですけど…1ケースで大丈夫ですか?』

と不安そうに聞いてきた。


私は発注表をチラッと見て、


『ハナはどう思う?』

と聞いてみる。


『俺は…ちょっと危ないと思います。2ケースの方がいいかな、って…』



同感



私はハナをじっと見て、
『ハナに任せる』
と言った。


ハナは少し驚いた顔をして、すぐに笑顔になった。


二人で発注表を本店にファックスして、私たちは店をあとにする。


ハナはすぐ近所に住んでいる。
でも、一緒に終わった時は、必ず私を駅の改札まで送ってくれる。


『じゃあ、お疲れさま』


私が言うと、
ハナは、

『お疲れさまでした』

と言って微笑む。


その笑顔は、いつも大人っぽい。



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