私の好きな人 私を好きな人

ハナの匂い

その日から、三日間、私は冗談抜きでご飯が喉を通らなかった。

よく
『胸がいっぱいで』
なんてことを言うけど、私はまさかそんなことが本当に起こることだとは知らなかった。

蒼太先輩のことを考えると、ううん、考えなくても、頭の中は蒼太先輩でいっぱいで、相変わらず、体の細胞たちが、『蒼太先輩が大好きだー』とうるさかった。


だから、私は三日間、水しか飲まなかった。
おかげで、三キロも痩せてしまった。


『恋愛ダイエットね』

私は体重計に乗って呟く。


大学にも行く気にならず、サボってしまった。
さすがに、バイトはサボるわけには行かず、いつも通りに出勤した。

バイトの時以外の時間は、ソファに寝転んで、一日中、蒼太先輩に以前借りたCDを聞いていた。

それは、蒼太先輩がいつもヘッドフォンで聞いてるアメリカのラウドロックで、放送禁止ギリギリの歌ばかりだった。

『すごくかっこいいバンドですね』
そう言って、CDRにやいたあとにCDを返した時、嬉しそうに笑ってた蒼太先輩を思い出す。



『今日の講義は出なきゃやばいよなぁ…』


私は頭をポリポリ書きながら、立ち上がった。



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