薫子さんと主任の恋愛事情

その気持ちに素直になろう──

大きく息を吸うと、八木沢主任を見つめた。

「あの……ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

ふつつか者って……。

言ってから、少し後悔。でも八木沢主任の嬉しそうな顔を見て、ホッと胸をなでおろす。

「おう。こちらこそ、よろしく」

差し出された手に自分の手をそっと重ねると、ギュッと握手を交わす。

男の人の指って、思っていたより細くて骨ばってるんだ……。

兄たちの大きくてごっつい手しか知らない私は、そんなことが気になってしまって。目線を下げると、八木沢主任の手をまじまじと眺めてしまう。

「おまえ、それ見過ぎだろ」

八木沢主任はそう言って笑い出す。

お、おまえって……。その呼び方、乙女ゲームのお決まりの呼び方で萌える。

なんて、こんな時に何を考えてるの!

「す、すみません」

自分がしていることに気づき慌てて手を離すと、何度も頭を下げる。

恥ずかしさが身体中に充満。それを隠すように、すでにコップに注いであったビールをまたもや一気飲みした。
でも、それがいけなかった。



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