薫子さんと主任の恋愛事情

「景色いいし、ちょっと散歩でもするか?」

「はい」

水族館の隣には大きなホテルがあって、目の前は美しい海。海岸線は綺麗に整備されていて、多くの人がそこで楽しんでいた。

二月のまだ冷たい海だというのに、波打ち際で子どもたちがはしゃいで遊んでいる。

「子供は無邪気でいいよなぁ」

その光景を見て、大登さんがぼそっとつぶやく。

「大登さん、子ども好きなんですか?」

「ああ、好きだよ。俺、五人くらい子供欲しいんだよね。楽しいと思わない?」

「ご、五人!?……ですか」

少子化と言われてるこのご時世に五人とは、大登さん侮れない。

でも言ってることはわからないでもない。

うちの両親も子ども好きで、五人の子供を生んだ。「あなた達が小さい頃は大変だったのよ」と言いながらも、その顔はいつも楽しそうで。苦労も多いけれど、喜びはその何倍にもなるってよく話していた。

「八木沢主家は、賑やかな家庭になりそうですね」

「だろ。それが薫子に似た女の子だったら、最高なんだけどなぁ」

「へ?」

大登さんが突然変なことを言うもんだから、おかしな声が出てしまう。



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