これが私の王子様

 クラスが同じだったことに、二人は喜び合う。

 そんな二人に明美は咳払いすると、詩織に「転校生におかしな情報を教えてはいけない」と、注意を促す。それに対し詩織は、横を向いてしまう。

「まったく、この前も……」

「先生、お説教は後で――」

「逃げるの?」

「もう、時間です」

 詩織の言葉に明美は、やれやれと肩を竦める。

 確かに壁に掛けられている時間を確認すれば、朝の会議の時間が迫っている。

 明美は嘆息の後、詩織に「転校生を教室まで案内するように」と、頼んだ。

「わかりました」

「もう、調子がいいのだから」

「ですから、先生は――」

「わかっているわ」

 明美は開いていた名簿を閉じると、困惑の表情を浮かべながら普段使用している机へ戻って行く。

 次の瞬間、詩織はゆかの手を握ると、一時間目まで時間があるので学校を案内するという。
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