晴れの空で




「梓、田口警部来てないよな…」


晴が私に小さい声で言った


私はあえて首を縦に振るだけ振った





田口警部…私はまだあなたから託されたメモを解読できていません








「晴」


「ん?」


「お父…刑事副部長の事、少し教えてくれない??」


「う、うん」


晴が動揺した

なんでだろう

晴に疑問を持ちっぱなしだ

というか、私は果たして兄の事件を解決することができるのだろうか…

証拠もなにも

事件自体がよくわからない…



「親父はさ、刑事副部長に昇格してから人がガラッて変わったんだよ。ほんとに、優しかったあの人がすんげー冷たくなって、母さんにも冷たく当たるようになってさー…」


晴はもともとお母さんのこと好きだったから反抗期ってのもあって反抗はしてたらしいけど、なにがともあれ、仲がすごく良かった

刑事副部長となって、色々とストレスが溜まっていったのかもしれない
晴たちへの態度はだんだんエスカレートしていった

日が経つにつれて、それが晴にとって当たり前に思えてきた…その時だった
晴のお母さんが自殺した

それは晴にとって、とてつもなく辛い出来事だった

それからというもの、刑事副部長は自分は関係ないの一点張りだった


『あいつの自殺は私に関係ない』

晴に冷たく言い放った言葉

晴はお母さんが自殺なんて絶対するはずがないと思ってお父さんである刑事副部長に何回も言った

それでも、知らないだの、関係ないだの言ったらしい



「俺さ、許せなかったんだよね。刑事副部長である前に、親として、母さんの夫として、許せなかった」


「…」


「昔は親父がすんげー誇らしかった。けどさ、母さんのこともあって親父にだけはなりたくない、って思えた」


「そっか」


「だから親父が声を潜めて話すからにはなにかかくしたいんだろうなー、って」



晴と刑事副部長の過去

大切な母親を亡くしてる

私も

私も、大切なお兄ちゃんを亡くしてる

そういえば、お兄ちゃんよく言ってたっけ?





『人間は何か過ちを犯すとき必ず橋を渡る。その橋を渡った、つまり犯罪者は悪い。だけどさ、その橋をつくった材料はなんだろうって、それがわかった時に初めて
俺たち警察は確信を持つんだ。俺や梓もその橋を渡っていないから、正しい道を歩めてるんだ。』




橋をかけたのがもし、その晴のお母さんの事件だったら…?




「晴…他に連続殺人事件について知ってることない??」


「んー…片岡健人さんの遺体だけなぜか黒焦げの焼死体で、あとは、仲道千鶴刑事と田口警部の関係くらいかなー」


「え…片岡刑事の遺体だけ焼…死体?」


「あ、うん!!」


みんな、鋭利な刃物で何回か傷つけられ銃弾も受けてる、そして顔もボコボコに…
なのに、1番最初の片岡刑事だけなんで焼死体?!


「それと、千鶴さんと田口警部の関係って…」


「恋人同士だったらしいよ!!しかも婚約までした仲って…」


「晴ー…でかした」


「え?!」


「後もう少しなんだけど…んー!!とにかく!!晴のおかげだよ!!」


「お、おう!!よかった!!てか、教えろよ!!」


「えー、めんどい。」


「おい!!」


「てゆーか、晴!!司さんと麗華さんにこの前晴が私に渡してきた殺人リストらしきメモを送ってコピーしてもらって!!桜子と将生と亮太さんには××工場に行って血痕が誰のなのか聞いてもらって!!」


「お、おう!!わかった!!」



血痕が誰のか…

田口警部ではないのは、確かだ

じゃあ、誰のなのか…


そして、あのメモ帳…田口警部が隠しておけと言った理由…

単純に考えれば私が長岡幸助の妹だから、なのかもしれない

けど、それは違う。

何か違和感を覚えた
田口警部と喋ったあとで

あれは何に対しての違和感だったんだろうか…








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