愛なんてない
わたしは俯きながらコートを丁寧に畳み、運転席の相良先生に差し出した。
「あの、色々とありがとうございました。
わたし、この事は誰にも言いませんし忘れますから。
だから……相良先生ももうわたしに関わらないでいいです。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。
お洋服代はきちんと返しますから」
ぺこんと頭を下げてから、車のドアを開けようとしたのだけど。なぜか開かない。
力いっぱいロックを引いても押してもダメで、ムキになっているわたしに相良先生がため息を着いた。