愛なんてない



わからない……。


わたしは京が何を考えているのかさっぱりわからない。


でも。


わたしは本当の疑問も気持ちも事実も理由も。何もかも。何一つ京に知らせる訳にはいかなかった。


縋るわけにはいかないから。


だから、わたしは。


わたしから京を拒むしかなかったんだ。


「逃げる理由? 決まってるじゃないですか。
わたしは京が嫌いだからです」


心とは裏腹の感情を、装う。


教卓の縁を手で掴み、肘をついて痛む体を起こし立ち上がる。


そして、侮蔑を込めた目で京を見た。


< 244 / 412 >

この作品をシェア

pagetop