蒼の歩み
「俺って1日中籠るってのできねーんだよな、むずむずする。予定が無くてもとりあえず外、出るな」



引き篭もり体質の私とは随分と違う休日を過ごしているようで。私だって、出かけるのが嫌いなわけではないしむしろ好きな方だが、休みの日にまで外へ出たくないという考えの方が強い。



どうやら、彼と私の考え方に相違点があるようだが、私はそんな行動的な彼にまた1つ魅力を感じた。



「蒼君、アレでしょ。休みの日とか仕事帰り、コレ」



コレ、と言いながら右手で円を掴むような形を作り、その手を右に捻ったが。これは電話なのでもちろん相手方には私の動作は見えないわけで。



なので、動作を口で説明した。冗談のつもりで、パチンコの話題を振った。だがしかし。



「今日、北斗で八千発。1Kで」



「ほらーーー!」



本当に行ってたのかよ。おまけに大当り。パチンコもほどほどに、と注意をしたが彼は困ったことに空返事だった。



「あ、そうだ。真歩」



「なーに?」



「今度の木曜、空いてるか?空いてなかったら別の日でもいいが」



「木曜?えーっと……」



言われて、シフトを確認する。木曜は、休みだった。電話の向こうでは、この為にかけたんだったと呟く彼の声。



「休みだよ、どうしたの?曜日を指定してくるだなんて珍しいのでは?」



「や、別に何曜日でもよかったんだが、俺が木曜休みだったんで。俺なー、今時期に毎年行ってる場所があるんだが、よければ真歩も一緒にどうかと思って」



「毎年行ってる場所?」



「おー、太陽がすげぇ綺麗なんだ。その日天気良ければいいけどな」



太陽……?空を見るのかな?何はともあれ、蒼君からのお出掛けのお誘い。



「一緒に行く!」



返事は1つしかない。
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