蒼の歩み
「蒼君て、深い考えをスーッと言ってくれて凄いなと思ってたけど。でも、さらりじゃなかった。きちんと考えて、それでしっかり答えてくれてるんだ。そう気づいた。物事をきちんと判断してて。そういうとことか全部見習いたい。……過大評価しすぎかな?」



でも本当にそう思うんだから仕方がない。



「そりゃすげぇ考えてるぜ、言葉でも何でもひとつひとつ相手を想って。どこまですれば泣くか、ここまでなら弄っても大丈夫か、とかな」



蒼君は冗談交じりに、私に顔を向け笑ってきた。が。あれ、そういう話だったっけ。



「……なんてな。過大評価し過ぎだな。俺なんざまだまだ小せェよ。上みりゃキリがねェ。だが、俺もそれなりに色んなモン潜ってきたって自負はある、頭は悪ィけど。そしてこれからも色んな奴の話を聞いて、視野を広げていきてェとは思うかな」



こういう類いの話はいつも長くなっちまうな、と蒼君は頬をかいていた。



「蒼君の話、好きって言い方もおかしいかもしれないけど、聞けば聞くほど、やっぱり蒼君の考え方好きだなって思う。もっと聞きたい。でもそう思う反面私の頭で蒼君のせっかく話してくれた言葉を全部きちんと理解できていないのかもと少し申し訳なくもなったりするの……」



「それでいいんだ、今は全部理解できなくとも、後でふと、コレがそうかなと思い出してくれれば」



私より人生経験豊富だろうし、やっぱり私、蒼君には憧れちゃうな。



考え方も、性格も、振る舞いも容姿も。何もかも好きだよ。



好きで、好きすぎて。



どこまで踏み入っていいのか苦しんでしまう……。






――そんな話をした後、今日は蒼君が『連れ』の話を聞かせてくれた。彼から、自分の友達のことを話してくれるのは珍しく感じ、私はこんな些細なことが嬉しかった。



連れは、星に詳しいだとか、仕事も出来るし尊敬している奴なんだとか。あのソウルメイトの本も、この人に借りたものだそうな。



私と一緒に観に行った映画も、その人も観たそうで。マダオが白髪になったのは、帰ってこない旦那をすごく心配したからだとか、蒼君の連れが熱弁してきてくれたらしい。



その流れで、映画の話になり。今度DVDが発売されたら、買うから一緒に観ようね、と。そういった約束も取り付けることが出来た。



ああ。私、やっぱり。



蒼君の色んな話を聞くたびに、貴方のことを知る度に。



知れば知るほど、好意が増していく。



だからもっと聞かせてほしいな。ゆっくりでもいいから、一緒に蒼君の道を歩んで行きたい。



そう思った日だった。
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