By-By-Time

【弘樹の場合】

「あの頃、いくら幼馴染でも亜美とは部活が一緒なだけで、校内では接点なかっただろ?だから、まだ優とは面識があんまりなくて……亜美が優の事が好きだって微塵も考えずに強引に小崎を紹介したんだよな」


中学2年の冬、俺は亜美への恋心を捨てて、幼馴染のポジションでいることを選んだんだ。最初はきつかったな。


中学までみたいにずっと一緒というわけにはいかなかった。そうしたら、俺の知らない亜美がどんどんと増えていってしまった。


見すぎないようにしていた、そうしないと恋心への封印が解けてしまいそうな気がして。


だから、あの頃の俺は亜美が誰を見ているのかなんて気づかなかった。というより、意識的に見ないようにしていた。


「今思うと余計なおせっかいだったんだよな」


小崎にも、亜美にも、優にも、みんなに悪いことをした。


「いいじゃん、いかにも青春って感じで。そういうのも含めて思い出だよ。ねー、亜美」


しんみりとし始めた俺に気づいたのか、真美がフォローするように言ってくれた。青春か……確かにそうかもしれない。あの時は気づかなかったけど、色んなことに一生懸命だったもんな。


「うん、今思えばね。だからいいんじゃない?とりあえずここにいるメンバーは今が充実してるわけだし」


話を振られた亜美も、うんうんと肯きながら真美に同意している。思い悩んだ時期があったとしても、みんなちゃんと前に進んでるみたいだな。


もう一度テーブルに置かれた写真を眺めた。なんだ、ちゃんと笑えてるじゃん。切ない感情も一緒に思い出してしまうから、昔の写真をじっくり見ることがなかったけど、意外と笑えていたことに気づいた。


「……そういえば、俺もこの頃から真紀の事気になってたんだよな」


出産を控え、里帰りしている奥さんの顔が思い浮かんだ。どうしよう、しばらく会えないのに会いたくなってきた。
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