もっと★愛を欲しがる優しい獣

情けないやつと心の中で悪態をついていると、姉さんが蚊の鳴くようなほどの小さい声で呟いた。

「違うの……」

「え?」

「子供達に買おうとしたんじゃないの……」

姉さんは俺の視線を避けるように顔をコンクリートの道路に向けた。

……何だか嫌な予感がした。

まさかとは思いつつ、確認のために尋ねる。

「もしかして……自分用……?」

姉さんは観念したようにああっ!!とため息をつくと、顔を掌で覆い隠した。

「だから黙ってて欲しいのよ……」

「えええええええ――――!!!!!!?」

答えが予想外だったせいで、人目もはばからず叫んでしまう。

(姉さんがゲームを!?それも自分のために?)

姉さんの倹約家ぶりは年季が入っていて、服や化粧品も必要最低限のものしか買わないのに、自分の為にゲームを買おうとするなんて変というか妙な話である。

俺の記憶が正しければ姉さんが最後にテレビゲームをしたのは、赤い帽子を被った中年のおっさんがキノコをゲットすると巨大化するゲームが流行った頃のはずだ。

10年以上のブランクがあるというのに、なぜゲームをしたがるのか不思議でならない。

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