もっと★愛を欲しがる優しい獣

『詳しい日程が決まったらまた連絡するから』

「……うん」

三カ月ぶりに会えると聞いてたちまち機嫌が直ってしまうなんて、現金なものである。

久し振りってだけで相手は渉なのに緊張しそう……。

『椿』

「な、何?」

顔は見えないはずなのに、にやけていることが渉にバレていないかつい冷や冷やしてしまう。

『愛してるからな』

「~~っ!!もう!!またふざけたことをばっかり言って!!」

“愛してる”は 電話を終える時の合図だ。

言うなれば“バイバイ”とか“またね”ぐらいの挨拶程度の言葉なのに、聞いただけで今までのこと全部許してしまいそうになるのは惚れた弱みなのか。

私は渉との通話を終えると大きく伸びをした。

「さて、今日も頑張りますか!!」

こっちだって渉に負けてばっかりじゃいられないんだから。

私は途中で投げ出したままになった食事を終えると、今日も渉がくれたルージュを唇に塗りなおして仕事に励むのだった。


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