コイツ、俺の嫁だから。【おまけも完結】
心の中で那央を呼びながら、半泣き状態のまま無我夢中で走るあたしは、ついに大きな手に腕を掴まれ──



「きゃ……!!」

「逃げるなよぉ」



耳元で嘲笑うような男の声が響いた。



「いやぁぁーーっ!!」



必死で叫んだつもりだけど、ちゃんと声になったのかわからない。

恐怖は最高潮で、男の手から逃れようと暴れながら、とにかく那央の名前を呼んでいた。

その時。



「──何してる!?」



遠くの駅の方から、こちらへ向かって走ってくる誰かの声がした。

動きを止める男の陰から一瞬見えたのは、暗闇でもわかる淡いグレーのパーカー。



「な、お……っ!?」



震える声を漏らすと、「縁!?」と驚きを含んだ声が聞こえた。

本当に、那央が助けに来てくれた……!


チッと舌打ちした男は、あたしを突き放して逃げ去ろうとする。

そんな奴を、彼が野放しにするわけがない。


持っていた何かをバサッと地面に落として走る那央は、あっという間に男に追い付き、見事な背負い投げを繰り出した。

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