紅色に染まる秘密の恋(休筆中)

言葉が話せるようになってから

私はりとさんを《りとにいちゃん》と

呼ぶようになっていたらしい。


『紅羽、違うよ。
“りきとおにいちゃん”だよ。』

と、父は私にそう言った時

『先生、俺はかまいません。
その代わり俺もこの子を
『紅(べに)』と呼ばせて下さい。』

彼が父にそう頼んだ事で

その後お互いの呼び名が

《りとにいちゃん》と

『紅』になったとの事だった。


りとさんは中学校を卒業後

そのまま付属の高校に進学。

彼の叔母夫婦の

料理屋のアルバイトを始めたのを機に

城咲家を訪ねてきてくれる回数も増え

いつの間にか彼が城咲家に

泊まる事も珍しくなくなった。


しかし、それと同時に

私の母の美沙子の外出が増え始め

週末になると家を留守にする事が

当たり前になった。


「…ママ…またお出かけ?」

綺麗な格好で出かけていく母を見て

『お母さんはお仕事なんだよ。』

『お友達とお約束があるんだよ。』

と、父は私を見て優しく言いながらも

何となく辛そうに遠い目や

寂しそうな顔をしているのを

子どもなりに感じ取っていた。







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