週末アンドロイド
On Sunday

私のやりきれない、大嫌いな日曜日の朝、丁度目が覚めた私が見たのは天井ではなく…。

突如、見えた光景に目を疑った私は、
「君は誰?」
思わず、そう呟いてしまった。
いや、私に限った事じゃない。誰だってそう呟いてしまうような光景がそこにあったのだから。だって、そこには、

「ソッチコソ、君ハ誰?」

カタコトな日本語を喋る私が居た。
自分の目の前に立つ、私。やや猫背気味なのが伺えるその姿は、朝嫌々見る鏡の中の自分だった。
「私ハ、薺 愛莉…ナズナ アイリ。貴女ハ?」
「私だって… 薺 愛莉だけど」
薺 愛莉。それが私の列記とした名前だ。でも、親に名前の由来を聞いたら「なんとなく」で返ってきた名前だけれども。

「…っていうか、これ夢…? だよね。にしては、自宅のベットの上って…」
その時、ティロリン、とタッチパネル式の携帯電話が鳴った。さっきの音は、新着メールを意味するアラートだ。私にメールを送るのは、早々居ないのだが。
私は起き上がり、すぐ横にある携帯電話に手を伸ばして…。止まった。

やはり、『もう1人の自分』が携帯電話を凝視している。

「…あのメールを見ても?」
何故か私は、自分に自分の許可を取るかのように話しかけてしまった。すると、『もう1人の自分』は、
「私モ見ルカラ」
そう言って、手元にある携帯電話を奪い取るように手に取り、新着メールを開いた。そして、『もう1人の自分』は瞬時に顔を曇らせ、携帯電話を私に差し出してきた。
「…? なんなのよ、もう…」
私は、携帯電話を受け取り、開きっぱなしのメールを見た。そこには、

『おっはよ~! 愛莉、起きてる~?
俺はバリバリ起きてるよ! そうだ!
明日、良かったら俺と一緒に登校しない?
返信待ってるよ~』

…という、なんともウザったい同クラスの男子生徒だった。ちなみに私は高校一年だ。
「ウザイ」
「そうだね…。これ日曜日になると毎朝来るんだよね」
「可哀想ニ」
「…あのさ、私に比べて感情無いよね…。自分で言うけど」
「ソンナ訳ナイ」
…なんだこれ。意外に会話が成立している…?
日曜日の朝、最悪の目覚めに起こされたもんだ…と私は冷静に思う。
すると、ドアの向こう、母の声がした。
「ちょっと~!? 日曜日だからって、まだ寝てるの~? そろそろ起きなさいよ~!? 」
やけに語尾に「!?」が多いのは母の癖だ。
「やば…早く起きないと…! うわああ時間ない…!」
私は、携帯電話を低い戸棚の上に置くと、傍にある衣装ケースをごそごそし始めた。
母は、私が家でだらしない格好をしていると指摘する。普段どこか抜けているくせに、こう言うことになると厳しいのだ。
「…私ガ代ワリニ行ッテアゲル」
『もう1人の自分』は、ふらふらとおぼつかない足取りで、部屋を出ていってしまった。
「…え?」
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