臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)

 試合が始まった。

 二人共、身長が百七十センチ前後で、左足を前にしたオーソドックススタイル(右構え)である。

 共にフットワークは使わず、ガードを固めてゆっくりと前に出る。

 中間距離(お互いのパンチが届くか届かないかの距離)になると、二人は積極的にパンチを繰り出した。

 序盤から激しい打ち合いになった。

 共にガードを高く上げていたが、お互い相手のパンチを防ぎきれず、相互のパンチが度々ヒットした。

 中間距離での打ち合いのせいか、ストレート系のパンチが多い。

 パンチが当たる度、その高校の応援場所から歓声が湧いた。

「ナーイスパーンチ!」

「追撃だ追撃!」


 裕也は次の試合に出る為、赤コーナー後方の折り畳み椅子に座っていた。

「松岡さん、打ち負けてないよー」

「打ち終わりは気を付けて!」


 青葉台高校の部員達も応援していたが、裕也の声が特に目立った。
< 117 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop