臆病者達のボクシング奮闘記(第四話)
「実は松岡さん、両足の疲労骨折で、最近までスパーが出来なかったですよ。これからはスパーが出来るし、横山さんもマス(ボクシング)をしてくれるんで大丈夫です」

「両足の疲労骨折か……。だから試合中、追い足が悪かったんだな?」

「疲労骨折はオーバーワークのせいでしたが、松岡さんは練習の虫で尊敬しています。本来の松岡さんは、もっとスタミナがあるし、ボクシングだってあんなもんじゃないですよ」

 祐也は少し誇らしげに言った。心から松岡を尊敬しているようだ。


 着替えに行く祐也を見ながら、兵藤が言った。

「アレは恐ろしく強くなるぞ。パンチはあるし、ハートもある。何より、強くなるのに貪欲だ」


 康平と健太は、何も答えず黙っていた。

 兵藤が話を続けた。

「……お前らは坂田と試合をするかも知れないから、複雑な気持ちだと思うが、試合は喧嘩と違うんだ。まぁ、その……とに角頑張れ」

< 166 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop