戦乙女と紅~東西動乱の章~
皇帝の指揮で、帝国軍は去っていく。

強敵ではあったが、引き際も鮮やかだ。

恐らくはこれから先も相容れぬ相手なのだろうが、ただ、武人としては尊敬できる男ではあった。

…そんな事よりも。

「あ、乙女!」

兵士が私を呼ぶのも無視して。

勝利の余韻に浸る間もなく、私は走り出す。

…聞こえた。

確かに聞こえたのだ。

あの声、あの皮肉めいた口調、あの的確な指示。

彼しかいない…彼に間違いない。

やはり…やはり生きていたのだ!!

デコボコとした走りづらい凍土を、時折躓きながらも駆ける。

こっちだ。

こっちの方から聞こえてきた。

ひたすらに走り続け、私はついに。

「…おいっ!!!!」








ボロボロの赤い外套をまとった後ろ姿に、乱暴に声をかけた。







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