佐藤くんは甘くない
佐藤くんとコンナン
───自分が大嫌いだった。
鏡を見るたび、いつものように変わらずにそこにいる自分が、大嫌いだった。
落ち込む自分が、大嫌いだった。
笑おうとする自分が、大嫌いだった。
弱すぎる自分が、大嫌いだった。
大嫌いだと思う自分が、大嫌いだった。
全部、消えてしまえればいい。
無くなってしまえたら、って何度も思った。
───でも、そんな自分が誰かを好きになった。
あの日から、自分の居場所を、意味をすべてなくしてしまった日から、毎日が真っ暗で辛くて、苦しいと思っていた日常が───穏やかになる。
モノクロだった世界が、途端に色を持ち始める。
少しだけ照れくさそうにはにかむ笑顔が、好きだった。
だれにでも優しいのに自分には厳しい強さが、好きだった。
いつだって平等に思いやる優しさが、好きだった。
変わろうって思った。
少しずつで構わない、どんな小さな一歩だって踏み出して───胸を張って、好きだって言える時がきっと来るはずだと信じて。