佐藤くんは甘くない
痛みはなかった。
あるのは、温かな体温と柔らかな感触。
思わずぎゅうっと閉じてしまった目をゆっくり、開いていく。
そして、私の体は石のように固まった。
『───あーったく、落っことすなよなー』
『ごめんごめん』
教室のドアを挟んだ向こう側で、そんな声が聞こえる。一瞬だけ、私の心はびっくりするくらい、冷静に自分に起こっているを把握した。
吸い込まれそうなほど綺麗な、黒い瞳がじっと私を見ていた。
桜色の形の整った唇は、ぎゅっと結ばれたまま開かない。
ほんの数センチ先に、佐藤くんがいた。