夢幻罠
捜索願いも出ていなかった。

死後約20日経過していた。

つまり家を出たその日か、翌日に殺された事になる。

男の死因は毒殺で、青酸カリだった。

乳飲み子は、DNA検査によると男と99%親子という結果がでていた。

しかし遺族たちは子供の存在に関して、知らなかったと主張しているという事である。

そして乳飲み子の死因は、頭蓋骨の陥没から事故か撲殺と推定されるということだった。

俺は死体の出てきた過程を何度も説明し、殺していないと言い続けたが、刑事たちは信じてないようだった。

「もう少しうまい嘘をつけ」

とも言われた。

しかし彼らのいうことも分かった。

…なんせ俺は、4日間一緒だったのに、彼女たちのアンダーネーム以外は何も知らなかったのだ。 

住所も名字も知らなかった。

彼女たちはそれぞれ、りんか、まり、なつみと呼び合っていた。
俺も何の疑問も持たず、そう呼んでいた。

しかし少し冷静になって考えてみると、すべて“モーニング娘”の旧メンバーの名に該当する。

偽名かも……。

おそらく……。

それに詳しい素性を知った途端に独占欲が生れる気もして、あえて聞かなかったという心理もあった。
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