方言男子に恋をした
「一時間で納得のいくものを企画して下さい。出来なければ…この後俺が言おうとしていることは分かりますよね?」


最後にニコリと微笑んだ。
その笑みには裏しかないのがよく分かる。


「はい分かります。一時間以内に必ず納得いく企画をします」


こうなったら仕方ない。
ここまで言われたらやるしかないじゃない!

変な闘争心に火がついた私は佐久間課長を正面に言った。

一夜を共にした相手がなんだって言うのよ!

横で社内課メンバーが私の名前を呼ぶけど聞こえないフリ。

そんな私に佐久間課長は、


「それは頼もしいですね…ではお願いします」


と裏にどす黒い何かをちらつかせながら、微笑みを保ちつつ言った。

いいわよやってやろうじゃないの!
この、裏がどす黒京都弁男が一言も言えないような企画を作ってやるわよ‼︎


「行くわよ!」


一人気合いの入った私は、広報部員なら誰でも使える小部屋を目指して歩き出した。

一時間以内に仕上げるには、ザワザワしてない静かな小部屋がいい。


「ちょ、詩織先輩!」

「何!」

「元案忘れてます‼︎」


…あぁ!

振り返れば焦ったような困ったような表情の社内課メンバーと、笑いを堪える佐久間課長が見えたのだった。
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