大好きな君へ。
 お袋から結婚を拒まれたマネージャーが腹いせに流した授乳シーン。
それが大女優の隠し子騒動の発端だった。


マネージャーは母達が双子だと知っていた。
きっと授乳していたのがどっちでも関係なかったのだと思う。
マスコミに流すと脅かせば、お袋が動揺すると踏んだのだ。


でもお袋は屈しなかった。
行方不明になった親父をよっぽど愛していたのだろう。
そして親父と瓜二つの僕も……
双子の妹もそれ以上に……


マネージャーと言う立場は戸籍も調べられたのだと思う。

そして一旦僕がお袋の籍に入り、妹の籍に移動させた事実を知ったんだ。


それは特別養子縁組と言う、代理母出産時にも用いる制度だったのだ。




 代理母出産の自主規制は昭和五十八年に決定されたが、原則実施されてはいないようだ。


未整備だった制度を検討し、平成十五年には認めないとした。

それは、丁度僕が子役として売れていた頃だったために噂が再燃したのだ。

でも法制化を公表したのにもかかわらず実施出来ずに強制力は持っていないようだ。


それでもマネージャーは日本では認められないことを口実に、悪巧みをしたのだった。




 マネージャーは僕が、養母の連れ合いの弟と生活している事実を知っていた。
そして時々プライベートでアメリカに行くことも……
それを画策行為勘だとぐったのだ。




 だから僕はマネージャーから脅されていたのだ。


違法で取得した国籍なのだとマネージャーは言って、アメリカへ追いやる気だったのだ。


叔父からお金を脅し取っておきながら、一緒にアメリカに行くように仕向けたのだ。




 そのせいで僕は芸能界から逃げ出したんだ。


マネージャーに見つからないように気を配りながら生活していたのだった。


だから、ソフトテニスの王子様騒動の時は焦ったのだ。

そのお陰で大好きなソフトテニスを封印してしまったのだった。


僕は結夏には、マネージャーとのトラブルは報告していた。


マネージャーが以前隠し撮りした映像で叔父を恐喝したらしいことを……


だから又脅かされると思って隠れるように生活していることも……
だから、結夏は気を遣ってくれていたんだ。
僕のことを両親に隠してまで……




 でも、もう逃げも隠れもしない。
僕は優香の言う通りに、正々堂々と生きて行くつもりでいる。


もっと早くそうしていればもしかしたら結夏は死ななくても良かったのかも知れない。



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