大好きな君へ。
 僕達はその約十ヶ月後、子供を授かった。


二卵性双生児の男女で、優香の希望で隼人と結夏から一文字取って芙生夏(ふうか)と名付けられた。
偶々だけど、夏産まだからぴったりだったんだ。
去年行った古代蓮公園の奥の沼にはきっと溢れるくらいの華麗な花が咲いているだろう。
この子達を泥沼で育てたくはないけど、どんな環境でも美しく咲いてほしいと思っている。




 結局三つ子は夢の又夢に終わった。
それでも優香は満足気だった。
きっとそれは、ハネムーンベイビーなのだろう。


あの日、僕は優香と三度肌を重ねた。
もしかしたら僕も三つ子を望んでいたのかも知れない。
でも本当に三つ子が生まれていたら、もう一人の子は誰の生まれ変わりなのだろうか?


そう考えながら一人で笑っていた。
優香の輪廻転生説にすっかり感化されていることに気付いて……


『結夏さん、お願いがあります。どうか隼人君を私達に託してください。私の子宮で隼人君を誕生させてください。出来れば結夏さんも隼人君と一緒に……』

僕は優香の言葉を思い出した。


『あの地蔵菩薩様に救いを求める子供達を見て、隼人君だと感じたの。だからあの二人を子宮で育てたいと思ったの』

僕は再び優香の優しさに泣いていた。


何故優香が新婚旅行先にあの札所三十二番の地蔵菩薩との対面を希望したのか、今更ながらに知ったのだ。


優香はお地蔵様の横で必死に助けを求める裸の子供達が隼人に見えていたのだろう。


その時きっと気付いたのだ。
何故、水子供養の方法を調べたくなったのかを……


結夏は菩提寺で永代供養してもらっていた。
それなのに、僕の負担を軽減させようとしてくれたんだ。


だから優香は僕と共に秩父三十四番札所を歩いてくれたのだ。
でも其処であのお地蔵様に出逢い、全てが運命だったと悟ったんだ。


光明真言と地蔵菩薩真言によって救われた隼人か目の前に現れたのだ。
もしかしたら、お地蔵様に抱かれていた子が隼人だったのかも知れない。




 僕は今、スポーツショップの事務員として働いている。
親父や、オーナーである祖父に支えられながら……


一種免許状を取得し、地方公務員の試験も合格した。
でも僕は中学の体育教師にはならなかった。


ピチピチギャルのお相手は、たまにやるテニスコートでのインストラクターで……


僕はまだ優柔不断な男だったのだ。





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