大好きな君へ。
 「今年卒業して、すぐにあの保育園に就職出来た訳か」


「そう、ラッキーだったの。まさか、地方公務員の試験が一発で合格するなんて思わなかったしね。それに又こうして隼お兄……違った隼に逢えるなんて……。みんなあの保育園に就職出来たからね」

今の思いを素直に口に出してみた。本当は大好きな王子様に又逢えたからだって言いたかったのだ。


「そうだね。優香の夢は確か保母さんだったな。夢が叶った訳か? 羨ましいな。実は、僕はまだ就職決まっていないんだ」


「でも、卒業迄にはまだ結構ありますよ」


「いや、優秀な生徒は三年で決まることもあるんだよ。僕は一歩も二歩も遅れているよ」


「そうなんですか?」


「今年から就活の解禁が三ヶ月遅れになったんだけど、去年と同じように暮れから始めた企業もあるしなかなか大変なんだよね。大手企業の就活の内定は八月かんだよ。でも中小企業にはその規定がないらしいんだ。だから、大手企業狙いの人が中小企業の内定をもらっている。入試の滑り止めみたいかな?」


「大変なんですね。ところで大学では何を専行なされているのですか?」


「学部は健康科学で、専攻はスポーツ科学科だけど……あまり健康とは言えないな。朝はパンと牛乳だけだし……」


「お昼は?」


「家の大学、生徒の割りに食堂が少ないんだ。一応四つあるんだけどね。それに最近ボッチ席何てのが増えてね」


「そのボッチ席って?」


「独りぼっちのボッチだよ。テーブルの中央に仕切りがあるんだ。まあ、便所飯より良いけど」


「そう言えば便所飯って、最近良く聞きますね」


「昔に比べたらキレイだけどね。ボッチ席登場で益々席が取れない気がする。其処から溢れた生徒は調整池の回りにあるベンチや芝生の上で食べてるよ。僕も椅子を取れない日は購買部のパンだな」


「もしかしたら夜もパンとか? それはないか」


「取り合えず、スーパーだけは近いしね。何とかなってる」


「私結構料理好きなんだ。良かったら作ってあげるよ」

言ってしまってから焦った。


「ごめんなさい。調子に乗っちゃったみたい」

私は頭をかきかき、顔を反らした。


楽しいお喋りは続いる。
そんな中、じっと私を見ている目が気になった。


(私なのかな? それとも隼? ねえ、どっちを見ているの?)

イヤな印象はない。
寧ろ好感度なのだ。


(私と同じように相澤隼さんのファンに違いない)
私はそう思っていた。


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