NENMATSUラプソディ

慧のお仕事日記☆

1

　人生は想像以上に楽勝だと思ったのは、特に医者になるつもりもないけど医学部に合格したり、気もないのに女が寄ってきたり、何にも望んでないのに何でも手に入ったり。

　あまりにもヌルゲーすぎて、もうすこしまじめに人生考えないと、ヤバいことになりそうだと、医学部をやめて、経営学部に入学し直して半年。親の総合病院を医者で継ぐ気は全くないし、経営の方が面白そうだと方向転換した。
　親としては、医者になってほしいというのがあったようだけど、優秀でまじめな妹がそれを叶えるだろうし、学部を変えてからはまじめな大学生をやってるんだから、特に文句は言われなかった。

　実は今、そんな妹が夢中になってる某ねずみの夢の王国でバイトをはじめた。
　ああいう全くかかわりのなかった新しい世界も面白いものだなと最近はよく思う。

　サービス業というのはなかなか侮りがたい。病院経営にも、サービス業を知っていて損は無いんじゃないかなあと、にこやかな笑みをお客さんに向けながら、軽快なBGMの中でそんなことをぼんやり考えた。

　クリスマスの夢の国はまさしく夢の国だなというのが今年の発見だ。お客としてクリスマスに来たこともなかったので、働いていると言うのにそのクリスマスすぎる景色に手を休めてうっかり見惚れる。

　この俺がクリスマスに寒風吹きすさぶ中、笑顔を配っているってすごい。
　いつもなら誰かしらといわゆるクリスマスを送っていたのだが、今年はどうしてか、この夢の世界で夢を提供する側に居てもいいかなと思ったのだ。

　そんなことを、高校時代からの友人からちょうど電話が来たのでそう話したら「リア充爆発しろ！」と言われた。

　というか、今年は彼女もいないし、そんなことを言われる筋合いはない。

　それに、こんな風に労働しながらのクリスマスは新鮮で、案外楽しめるもんだなと言えば「爆ぜろ！おまえなんかあああああああ！！！！！！」と叫ばれる。

　理工学部も三年ともなると忙しいからな。論文の締め切りにでも追われているのかもしれない。

　「悪かったな、忙しいところ長電話して」
　「くっそ、クリスマスが忙しいわけあるか！一回死ね！！」

　強烈な一言を叩きだして電話は切れた。