運命の人

真実

それからは毎日連絡をとった。
高校はどうかとか、友達の話。
楽しかったことも悲しかったこともお互いたったの数行でやりとりする。
中学生後半のように荒れてる様子もなくて、すごくはなしやすい。
[彼氏はできたのか?]
ある日綾野はそんなことを聞いてきた。
[いるわけないじゃん]
スタンプも顔文字も付けずに送る。
やっぱ馬鹿だね。まだ諦めてないのに。
[俺もいないんだわ]
これは意外に感じた。
綾野はけっこう顔が整っているしノリがいいので中学生時代モテてたから、高校生になって彼女いると思っていた。
…てかわたしにこんなこと言ってどうするの。
[綾野なら彼女できるでしょ?]
そう送ってケータイを布団に投げる。
とくに意味はない。
クッションをかかえてそわそわする。
しばらくして着信の音が鳴り、布団に投げたケータイを探し出して電源をつける。
既読はつけないように表示を見て確認。
[俺好きな人いるからさ]
胸が苦しくなった。
綾野に対する『好き』は忘れてるはずだった。彼の迷惑になりたくないから。
好きになっちゃダメなのに、綾野の1行の返信に悲しくなる。
綾野は次に進めるのに。
幸せになれるのに、止めたくなる。
腕を引っ張りたくなる。
自分で自分を抑えて返事を送る。
[そっか、頑張ってね!]
心にも思っていないこと。
むしろ逆なのに。
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