運命の人

告白

夏が近くなってくる。
日差しが肌に刺さるように痛い。
体育の授業でも、さすがに長袖のジャージを着る人もいなくてみんなハーフパンツに半袖。
今日は夏休み明けの体育祭に向けて練習するらしくて、種目はリレー。
2チームに別れて競争するらしい。
わたしは見学。
何故か綾野も見学。
やっぱり無理してたのかな。
先生がみんなに集合の笛を鳴らす。
見学以外のみんなは先生の元へ走る。
綾野と二人きり。
地面にドカっと腰を下ろす綾野。
「鈴崎も座れば?足、辛いだろ」
「そうしようかな」
ちゃっかり綾野の隣にわたしも腰を下ろす。
もう綾野の隣には慣れてきたというか、ためらいもなくなった。
「あちーなー」
わたしが、ねーというと満足げに笑う。
はあ、可愛いなぁ。
グラウンドに生徒たちの笑い声が響く。
途中で何人か転んだり、バトンパスを失敗したり。
そのたび笑っている。
楽しそうだなぁ。
「お、次加宮だぞ」
「あ本当だ。」
わたしたちの視線の先にはまるでプロのような構えをしてバトンを待つ加宮さん。
加宮さんのチームが勝っている。
バトンが渡った!
「「!?」」
わたしと綾野は自分の目を疑った。
「加宮…顔面からコケてなかったか?」
「倒れているようにみえる…」
バトンを受け取ってすぐにこけた。
プロのような構えはどこに…。
「あぁ〜抜かされるぞ」
加宮さんの相手は男子。
「加宮さん!がんばれ!!」
抜かされちゃう!
「おっそい!加宮がんばれよ!」
歩いているように走る加宮さん。
本人の顔はいたって真剣。
そういえば体力測定の時もぶっちぎりのビリだったような…。
「…っ、あー!抜かされたか」
あと少しのところで抜かされる。
もうすこしでバトンパス!
「次のひとは?」
加宮さんに手を伸ばしている人は…。
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