運命の人
夏休み
夏休みはひたすら部活。
大会練習大会練習の繰り返し。
蝉の鳴く声と痛いほどの日差し。
去年は脱水で数人倒れたっけ。
ふとサッカー部を見てみるが、綾野の姿はなかった。
わたしは周りの人に綾野の存在を聞いたら知らないよ?なんて言われそうで怖くなってくる。
「…っ!」
綾野のことは忘れると決めたのにわたしはまた綾野のことを考えてしまった。
そんな自分に喝をいるために自分の頬を叩く。
「おいおいなにやってんだよ」
変な奴を見るような目をする陸生。
「…ちょっと自分に喝を」
ちょっと強かったからひりひりする。
「見せてみろ、あーあ赤くなってる」
陸生はわたしの頬を触っている。
「ちょっ…!大丈夫だって!」
「いてぇ!人が心配してやってんのに叩くことはねぇーだろが!」
「あ、ごめん」
ったく、と言って陸生はどこかにいく。
…怒らせちゃったかな。
しばらくすると陸生は戻ってきてわたしに、んとだけ言ってタオルを渡す。
受け取ると少し濡れていた。
ひんやりしている。
「それでも当てとけ」
「…ありがとう」
お礼を言うわたしに少ししかめっ面をしながら陸生はいった。
「サッカー部の…綾野と別れたんだって?」
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