運命の人
家に帰ってから死ぬように寝て、朝にみんなにメールを返した。
隆生からもメールがあった。
[とりあえず明日顔だけでも出せ]
命令口調。いつもはムカつくけど今は何故か嬉しく感じた。
わかった、と返事をして着替えを始める。
今日は土曜日なので午前中だけ。
足が痛くならないように工夫して着替えるだけでもいつもの倍以上かかった。
「…ふぅ」
顔洗って寝ぐせ直して歯磨き。
いつもはすぐなのに片足が不自由なだけでも時間がかかる。
これは部活遅刻だ。
怪我をしたことは顧問はしっている。
今頃実樹がみんなを仕切ってアップを始めているだろう。
…心配。

母に車で送ってもらって、校庭についたころにはメインメニューに入っていた。
わたしの姿をみた実樹たちは走りながら大声でわたしに何か言っている。
おはよう!大丈夫か!みたいな。
思わずフフっと笑ってしまった。
大丈夫じゃないけど、ピースをする。
部員の異変を見てわたしに気づいた林先生はすごい勢いでこっちにきた。
「症状は聞いたが、その、残念だな…」
言わないでほしかった。
惨めになる。
「だが、由梨香次第で先生もできるだけのことはしよう。完治すればジョギングはできるのだろう?」
答えは聞かれなくても決まっている。
「やります」
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