白い月~夜明け前のその空に~



そしてとうとう卓袱台に食器が並び、食べるばっかりになっても、優月はまだ帰らなかった。




「ゆぢゅ、まだあ?」


瞬が優月の座る場所を指差して言う。


「うん。…お腹減った?先に食べちゃおうか?」


「んんー…」


ぷうっとむくれるほっぺ。

食べたい気持ちも優月と一緒に食べたい気持ちもあるらしい。





確かめるためではなかったが、前回は一緒に出かけていた相手が分かった。

でも今回はその相手と同行していないことは確かなのに、名目はデートとなっている。




おばあちゃんとおじいちゃんには、彼女が嘘をついて出かけていることを伝えていない。


陸の心配は時計の針が進む度に増していった。




勘なのかどうか分からなかったが、陸は妙に嫌な予感がしてならなかった。


今すごく遠くにいるようで、ひょっとしたらこのまま帰ってこないんじゃないかと…。





家族が家に帰ってくる、そのことが、陸にとってはとてもありふれたいつもの日常ではなかったのだ。




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