白い月~夜明け前のその空に~


死神の真っ黒なフードつきマントの衣装をまとった長澤は、その格好で今も女子達に鎌でちょっかいを出している。

優月は彼を呆れながら見ていた。


(またやってるよ…。本番が心配だ)





遠巻きに見ていたところ、目が合ってしまいパッと逸らす優月。


「佐野ちゃん!」


(えっ…、こっち来なくていいし)


鎌を担ぎながら大またで優月の方へ向かってくる。



「お前はもう逃げられない…。今ここで死の国へ連れていってやる…」



ビュンッ

狂気に満ちたニタニタ顔で鎌を振りかざし、風を切る。



ガシッ

真剣白刃取りのごとく、優月は作り物の大鎌を寸前で掴む。


「それ、あんま振り回さないでね。壊したらまじ承知しないから」


ピクリとも動じずに真顔で言う。
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