キミトノナツ……

「っ……」

びっくりしたようで肩を震わせる、楠木さん。

「楠木……怖い?怖いなら黙ってうちに服従しとけばいいんだよ!!」

坂井さんの怒声で静かになる教室。

静かすぎて、耳が痛くなる。

「蝉……」

誰にも聞こえないように呟き、私の机の下で必死に生きてる雌蝉を拾う。

「藍田さん、それ貸して?」

ニコニコ笑い私に近付く、坂井さん。

蝉……好きなんだ。

「うん……」

私は坂井さんの掌に懸命に……すがり付くゆなうに生きる雌蝉を置いた。

「ありがと……」

笑ってる坂井さん……怖い。

目が笑ってない……何かを企んでる。

「楠木、よーく見とけ」

楠木さんはびくびくした、恐怖が色付いた瞳で坂井さんを見る。

「次……調子乗ったら、こうなるからな?」

──グシャッ!

嘘……
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