不機嫌なアルバトロス
「っ」


振り返ると、黒いコートを着る、黒髪長身の中堀さんが居た。



「あぁ、噂の彼、ね。おまえさぁ、恥ずかしくないの?俺が振ったら次の日に新しい男とかさ。」



掴んだ腕を放さないまま、ちらっと一瞥すると、宏章は直ぐに視線を私に戻し、馬鹿にしたように笑った。


かっと顔に血が上る。


そんなんじゃ、ないのに。


いや、そうなんだけど。


でも、中堀さんが見ている前で言われるのが、恥ずかしくて情けなくて、穴があったら入りたかった。隠れたかった。



「ま、いいけど。俺、今日はお前と過ごしたいんだよね。どうせ、暇だろ?」



ほんと、最低。


最悪。


私ってほんとそれだけの女なのよね。


暇つぶし。軽い女。利用されるだけの女。


あぁ泣きたい。


わんわん泣きたい。
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