不機嫌なアルバトロス
午後も散々だったけど、午前よりは持ち直した。




「あ、そういえば、さっき違う話に気を取られてたから言わなかったけど、佐久間に迫られたんでしょ?ほんと、気をつけなよ。なんか、噂話によるとまだ花音のこと諦めきれてないらしいよ。自分からフっておきながら、男ってワケわかんないわよね。」




帰る準備をしていると、隣で憲子が耳打ちする。




「会社出て駅までは一緒に行ってあげるから。」




「ありがと…」



憲子からの話に、昨日の出来事が思い出された。



宏章に腕を掴まれたことが、あんなに嫌だった理由が、今でははっきりとわかる。



私は、出逢った時から何度も、中堀さんに腕を掴まれている。



…そんな、ばかげたことが、理由だ。


思い返しながら、無意識に掴まれたその部分に触れた。
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