不機嫌なアルバトロス
≪もしもし、花音?!≫



ワンコールで出た憲子の声はかなり慌てているようだった。



「…うん。昨日…ごめんね」



開口一番に謝る。




≪ホント、びっくりしたわよ。まさか先帰っちゃうなんてね≫




怒るのを通り越して呆れていらっしゃるようだ。




≪でも、ま。あんなことされたら当然か≫



「―え?」



≪あの空気男にキスされてなかった?≫



み、見られてたのか…よりによって憲子に。




がっくりと私は項垂れた。



≪遠くから見てて気づいた時には遅くって。人を掻き分けるのだけでも一苦労だったの。でもあのクラブのDJ、抜群に格好良かったわー。目の保養だったなぁ。あの人狙いのお客さん結構多いみたいだったもん。花音あの人の事知ってた?≫





「………なの」




≪え?≫




小さな声で呟いた言葉を憲子が聞き返す。




「あの人が、、例の、、中堀さん、なの」




≪ふーん、ってえ!?えええ!!!真面目に言ってる?≫




憲子は予想通りのリアクションをした。




「…で、ごめん。私風邪ひいたみたいで…ほんとに申し訳ないんだけど…今日仕事休むね…」





≪え?ちょっと…花音!?≫




憲子に返事をせず、会話も中途半端なままで、私は再び携帯の電源を落とした。


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