不機嫌なアルバトロス

=========================




「あ、、、あなたがっ……欲しいんです…」




掴まれる手の力が、少し緩んだ。


目の前の彼の瞳が、揺れる。




なんかもう、いっぱいいっぱいで、言ってしまったことへの後悔とか反省とか、そんなものすら感じる余裕もなく、私はただ中堀さんを見つめていた。



少しの間、沈黙が流れる。



車が道路を走る音が、やけに大きく聞こえた。




「…それ、どういう意味?」




やがて彼は口を開く。


氷の粒がまじっているかのような、少し突き放したような言い方に、私はやっと我に返った。




―わ、私ったらなんて事を。



「え、、、と…」



だけど、何て返せばいいのかもわからず、早鐘のように打つ心臓のせいで具合が悪くなりそうだ。




「!」



急に手が、解かれた。



間を流れる北風。


それだけで。


全てが終わったかのように思えた。
< 292 / 477 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop