不機嫌なアルバトロス
こんなんじゃ、だめだって。


頭ではわかっているんだけど。



つくづく自分は社会人として失格だって実感するけど。



心がそれに付いて行けない。



考えることをやめてしまって。



空白だけが、頭の中を支配している。



機能することを拒むように。



頭が動いてなければ、勿論身体も動いてくれないわけで。



私の手は朝から、キーボードを悪戯に叩いては停止してを繰り返していた。




元々仕事人間ではない私は、それに没頭して他を排除できるほど器用じゃなく。




休憩しようと自販機の前に行けば、ミルクティーを避けることくらいしかできない。




そしてミルクティーを避けようとすると、自販機の前を通ることすら嫌になってきて。



結局自分のデスクに座ったまま過ごしている。



何も生み出さない。



だけど、力もない。



腑抜けと言われても仕方ない。




「花音、お昼、行こうか」



昼を過ぎた辺りで、憲子が声を掛けてくれる。



「…ごめん、いいや。食欲、ない」



「そんなこと言って!ほとんど食べてないんじゃないの?顔色悪いよ?」



「食べたく、ない。」




駄々をこねる子供のように、俯いて呟く私に憲子は溜め息を落とす。




「…わかった。でも、、そのままじゃ、身体壊すよ?仕事にも支障を来たしているし…。気持ちはわかるけど、切り替えなね。」




そう言うと、憲子は踵を返してオフィスを出て行った。






憲子には、日曜日に一部始終をかいつまんで電話で話した。


家まで直ぐに来てくれて、貸してもらった胸でわんわん泣いた。


元々予定通りのことの筈だった。



中堀さんと上手く行くだなんて、みじんこ程にも予想していなかった。



二週間、彼の為に動いて。


そして、さよなら。


シナリオ通り。



なのに。


なんで。



私はこの事実を、受け入れられないんだろう。


< 425 / 477 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop