12月の恋人たち
「…ありがとう。まぁ、…本音を言えば、押し倒したいけど。でも、まだ緊張してる海央ちゃんを押し倒したくないかな。俺としては。」
「わ、私は大丈夫、だよ!」
「どこが。言いながら震えてるからね。俺の目は誤魔化せない。」
「うっ…!」

 確かに震えてはいた。予備知識はあるものの、実戦経験はない。だから怖い。たとえ相手が陸であろうとも。ただ、泊まりに行くと話したらこういうこともあるのだと友達に言われまくってしまったからには、海央の頭を簡単には離れてくれない案件だった。

「海央ちゃんの身体を手に入れるために付き合ってるわけじゃないよ、俺は。だからいいんだって。少しずつで。今日は一緒に眠る。できれば手を繋いで。」

 陸の大きな手が海央の両手を包んだ。

「でも、そんなに大人になりたいなら、海央ちゃんには1個頑張ってもらおうかな。」
「…なぁに?」
「キス、して?」
「へっ?」
「俺、目をつぶってるから。海央ちゃんの好きなタイミングでキスして。」
「でもっ…。」
「押し倒されるより簡単だと思うけどな。」
「それはっ…そうだと、思うけど。」
「じゃあ、ね?」

 陸はそれだけ言って目を閉じた。海央は意を決して、少しずつ唇を近付ける。陸とだって数えるほどしかしていないキスなのに、自分の方からするなんて生まれて初めてだ。
 ゆっくりと唇を重ねる。熱がゆっくり伝わってくる。そっと唇を離すと、陸の瞳に捕まった。

「上手。じゃあ、もう一段階、大人になろうか。」
「えっ…あ、んっ…!」

 ぬるりと温い感触が口の中を動き回る。と思ったら唇は離れ、何度も何度も海央の唇を啄んでいく。それが終わると再び深い交わりとなり、唇が完全に離れた頃には少し意識がぼんやりしていた。

「…その顔見てると…止まれなくなりそう。寝よ。」
「っ…はぁ…今のっ…な、に…。」
「今まで我慢してた分のキス。でも海央ちゃんにしたいキスはまだまだあるけど。」
「ひぇっ!」
「でももう今日はしない。だから寝よう、一緒に。」
「…変なこと、しない?」
「しないしない。手を繋いで寝るだけ。」
「…お願い、してもいい?」
「うん。なにかな?」
「…手、繋いで、…抱き、しめて?」
「っ…もちろん。喜んで。」

*fin*
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