12月の恋人たち
<12月24日 午後6時>

「完成しましたよ、雪姫(ユキ)。」
「うん…いつも思うけど、なんで洸(コウ)の作るアップルパイはこんなにキラキラしてるの…。」
「それは食べてくれる人がキラキラしてるからじゃないかなぁ。」
「き、キラキラなんてしてないよ!」
「充分キラキラですよ、雪姫は。」

 クリスマスイブ、雪姫は洸の家に呼ばれていた。

「雪姫ちゃん、今日は泊まっていってくれるのよね?」
「お母様!」

 キッチンに入ってきたのは洸の母親、澄枝(スミエ)だ。洸と付き合い始めて挨拶をしてからというもの、雪姫はやけに好かれてしまっている。

「ね、雪姫ちゃん!今日は私と一緒に寝ましょうね?」
「ダメだよ母さん!雪姫は僕の部屋に泊まるんだから。」
「高校生男子と雪姫ちゃんみたいなお姫様を同じ部屋に泊めれるものですか!」
「なんで僕の彼女を母さんと一緒に寝かせなきゃいけないの!」
「ちょっ…二人とも…。」

 こんな風に板挟みになることもしばしばなほどに好かれている。どちらにせよありがたいことではあるけれど、いつも少し心苦しい気持ちになるのも本当だ。

「雪姫、いくよ。」
「えっ、あ、洸…!」
「雪姫ちゃん!」

 ぐいっと腕をひかれ、ずんずんと階段をのぼっていく洸。着いたのはもちろん、洸の部屋。ガチャンとドアの閉まる音がした。

「…洸?怒ってる?」
「雪姫には怒ってません。母さんには…少し。」
「洸のお母様、好きだけどなぁ、あたし。」
「知ってますよ。二人が相思相愛なのは、わかってます。」
「相思相愛って…なんだか語弊あるけど…。」
「なんで母さんがライバルになるんでしょうか。」
「…ライバル、じゃないと思うけど。洸って一人っ子でしょ?だから女の子が珍しくて楽しいんだよ、きっと。洸のお母様、あたしなんかよりもずっと女の子って感じだもん。お母さんっていうよりお姉ちゃんって感じ。」
「若作りなだけです。というか、僕よりも雪姫と仲良くなろうとしていることが許せない!」
「…落ち着いてよ、洸。」

 こんな風に怒る洸は珍しくて思わず笑みがこぼれる。単純に可愛いと思ってしまう。
 その時、ドアがノックされる音がした。
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