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うばわれたもの
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夜の広い屋敷に警報が鳴り響く。


『大変だ!!侵入者が…』


幼い私は父や母から警報が鳴ったら絶対に部屋から出るなと言われていた。


ここの部屋に居れば絶対に安全だから、と。


この部屋には、両親と一部の使用人しか入ることはできないといわれていた。





 ガタン






音のしたほうを見ると部屋に知らない男がいた。


けがをしているみたい。


『どうしたの…?痛いの…』


男は座り込んでしまった。


わたしは男にお気に入りだったハンカチをまいてあげた。


6歳の私にはそれしかできなかった。



バタバタと廊下を走ってくる足音が聞こえた。


男は部屋の窓から飛び降りた。


それは、映画のワンシーンのように華麗だった。



 『お嬢様…!!』


窓から10月の初めの肌寒い風が吹く部屋の中で使用人の声が響いた。


『…窓をお開けになっていたのですか?』


『うん。ちょっと…』



先ほどの出来事が忘れられず曖昧な返事しかできないわたしを不思議そうに見つめていた。



目を覚ますとそこは真っ白な世界だった。





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