天の川のほとりで

 七夕に降る雨を催涙雨(さいるいう)と言うらしい。

 年に一度、7月7日に天の川に橋が掛かり逢うことを許される、織り姫と夏彦星。

 だが雨が降ると、水が増水して橋が渡れず二人は逢えなかった。

 その悲しみの涙が、地を濡らすのだという。


 そんな悲しいお伽話(おとぎばなし)は、ある日突然やってくる。
 

 それは、一つの可能性を生み出し。

 ふたつの心を大きく隔てていく。

 愛し合う意味がすれ違うとき、その先にはさよならしかない。




 ───僕を、憶えていますか?




 短冊に込めるように、あの日の記憶を色鮮やかに浮かばせる。

 さよならと愛してるの狭間(はざま)を揺れる、天の川のように……。
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