守ってダーリン!
苦笑する小泉さんに、市谷さんはきまり悪そうに「すいません・・・」と小さく呟く。

市谷さんが、それだけ私を待ってくれていたのだと思うと、私の胸はキュンと鳴る。

「じゃあ、ぱぱっとやっちゃいましょうね。」

そう言って、小泉さんは手早く消毒を済ませると、「ごゆっくり〜」と意味深に笑って、市谷さんの病室を出て行った。

私と市谷さんは、なんとなく照れたように笑いあう。

その後、再び甘い時間が訪れるかと思いきや、すぐにまた刑事さん仲間がやってきて、私はいつも通りそそくさと病室を出たけれど、それでもとても満足で、浮足立つ気持ちで家に帰った。


それからは、シフトで行けない日を除き、毎日のように市谷さんのお見舞いに訪れた。

未だお互いの気持ちを伝え合ってはいないけど、彼との距離は、確実に縮まっていることを感じる日々。

その証拠・・・かはわからないけれど、ちょっとした雑用なら、私に頼んでくれるようにもなっていた。


(お茶取って、とか、そのレベルだけど・・・。)


いままでは、そんなことすらなかったから。

もっと頼ってほしいし、もっと、力になりたい。

そしてもっと・・・そばにいたい。

市谷さんへの気持ちは、日に日に大きくなっていく。

けれど。

その後も、二人きりになるチャンスは訪れず、私たちの関係が今以上に発展することはないまま、市谷さんは退院の日を迎えたのだった。

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