another way【完】





病院に向かうと、

美紘は私を見た瞬間に泣き出した。





倒れた原因は睡眠不足とのことだった。





私達のことで
この子に負担をかけてしまっていたのは

考えなくてもわかることなのに、



私は彼女に甘えていた。




美紘は強いんだと、決めつけていた。





「ごめんね、美紘…。

 お母さんとお父さんのことで
 いっぱいしんどい思いさせてるよね…」




「お母さん…っ…う…あっ、あたし…」





嗚咽しながらも
どうにか言葉を紡ごうとするこの子は、


強くもなんともない、


年相応の女の子だった。





「ゆっくりでいいよ。

 お母さん、ここにいるから」




私は彼女の頭を優しく撫でた。




こんな風に、頭を撫でたのは

何年ぶりだろうか。






「おか、ぁさんっ…あた、し…ぅっく…

 あたし…塾…やめっ…ひっく…やめ、たい。


 勉強…疲れ、たよ…
 高校の、ランク落して…いい…?」





彼女から数ヵ月ぶりに聞いた本音。




ああ、そんなことで悩んでたのか。



私が「頑張れ」とか「志望校のため」とか

強制するようなことを言わなかったぶん、



彼女は、
自分で自分を、縛り付けていたんだ。





「…いいよ。お母さん、
 そんなことで怒ったりしないからね?

 美紘がしたいことして、
 行きたいとこに行っていいんだよ」




「お母、さん…ありがとう……!」






私達は抱き合った。



そして、泣いた。









これが、不器用な私達の



家族の形になると信じてーーー。















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