いろはにほへと
まぁ、どうせ、最初からマイナスイメージなんだし、今だってどうせ好かれちゃいないし、絶対前髪は切ったほうが良いし、ひなのの為になると思う。




自分の中でこじつけにも近い理由付けをすると、俺は薬箱に入っている鋏を手にした。




要は、自分がひなのの顔を見たい。



それだけだった。



さすがにはっきりきっぱり嫌いと言われたのは、きつかったけど。





でも、確かに俺、悪いから。


ごめんね、ひなの。




ひなのの額に傷がつかないように細心の注意を払いながら。




鋏を動かした。






ぱらりと落ちたひなのの黒い髪。



その下から出てきた瞳は、黒目勝ちで。




起きた出来事を理解できずに、うろたえているのがはっきりとわかった。





うん、やっぱりかわいい。



思ってたよりちょっと幼い。





「俺の事、嫌いだったら嫌いで良いから。」





とは言うものの、ひなのの顔を見れて、嬉しくない筈がない。





「でも、俺はひなののこと、好きだよ。」






微動だにしないひなのの黒髪を少し乱暴に撫でても、ひなのは反応しなかった。


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