いろはにほへと
華道の家元 青柳邸
姫子さんの大きな屋敷から、青柳さんの家は近い。


姫子さんの屋敷程では無いが、青柳さんの家も十分広かった。



立派な石で出来た迎門もあるのだが。





「…こんな所から入ったら、怒られます…」



「しょうがないって!あっちから入ったら見つかっちまう。」




何故か、塀をよじ登って庭から入ろうと試みているトモハル。



「つーか、なんで裏口閉まってんだ…」


「あなたみたいな人がいるからだと思います。」


「・・・」



鹿威しの小気味良い音が、カコーンと響く。



「…あの、私を下ろしてくれませんか?」



「そしたら俺の肩に乗って、先に中入ってくれる?」



「嫌です。」




そもそも、どうして、私が一緒に逃げなければいけないのか理由がわからない。




「じゃ、駄目。」


「うわ…」



トモハルの身体にぐっと力が籠もったかと思ったら、あっという間に塀を登り、ふわっと浮いたかと思ったら、見事な日本庭園に降り立った。



担がれて走られて、そのまま片手でよじ登って、ジャンプとか、、恐ろしすぎる。。。



下手なジェットコースターより、怖いかもしれない。



そして、忘れてはいけない。



今行ったこれは。



「誰だ、あんたは。」



立派な不法侵入。



青柳さんのご主人が、ゴルフのバットを片手にこちらを睨み据えていても、別におかしくないんです。
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