いろはにほへと
荷物を廊下にひょいっと乗っけると、回れ右して、直ぐに換気の為に雨戸を仕舞う。




漸く光が差しこんだ所で、今度は窓を開けて回った。




と、いっても。



この広い屋敷中の窓を開けてしまうと無用心になるので、掃除する箇所を幾つかに分けてその都度開け閉めをすることにしている。




四回目となれば、もう慣れたものだ。




階段下の物置に、掃除用具は全て詰まっていて、その中から叩きや掃除機、雑巾などを取り出すと、私は腕まくりをして、エプロンを掛けた。






「あ、そうでした…」





蝉のうるささに、いつものお馴染みのアイテムを忘れていたことに気付いた私は、もう一度物置に戻った。






「これがないと、少しやる気がでませんからね」






ふふふと笑って、取り出したのは、古びた赤いラジオ。




私の、友達である。




早速電波の良い所へ持って行き、スイッチを入れた。







これで、準備は整った。






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