いろはにほへと
スタジオからの帰り道。


時計の針は既に0時を過ぎていて、外は真っ暗だった。




食事を済ませてから他のメンバーと別れ、同じ方向でベースの、木村孝祐(キムラコウスケ)と一緒に帰る。




「遥、タクんないの?」




歩きだそうとした所を呼び止められて、そうだよな、と思う。




「んーー。今日は歩いて帰りたい気分。コースケ、タクって良いよ」





ジーンズのポケットに手を突っ込みながら答えると、孝祐は笑う。




「何々?感傷的になってんの?いいよ、付き合うよ」




「いいって。ちょっと考え事」



「なんだよー、水臭いな。」





孝祐は不貞腐れてみせながらも、隣を歩き出す。




それぞれ、ギターとベースを背負いながら、男二人並んで夜道を歩く。





「まこちゃんが心配してたぜ?最近遥が元気ないって。」





「元気ないっつーか…よく、わかんねぇんだ。」






自分の追いかけていた理想とは、こんなものだっただろうかと。










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